2013年12月4日水曜日

Part7


ポケットとは、Aの空間とBの空間の間に別空間として存在する空間である。それ自体が物体としてあるわけではなく、隠されていて、折り畳まれている空間である。つまり、二つの領域があった時に、内側と外側を分ける境界線があるが、その境界線にも幅があり、そこに無法地帯としての空間がある。この無法地帯に寄生することができる。この寄生空間は、国家から自律して生活を作るために使うことが出来る。

空間には属さない境界線上の大きさを持たない領域が、ポケットによって空間そのものを覆うぐらいの大きさ持ち、空間全体の主従が反転する。
属さないことで、ひっくり返る可能性がある。この時、境界線=ポケットが入り口になる。部分から世界が反転する。

客観的な情報としてある空間が、暮らしていると変な物が気になる。それを気になったとたんに全体のシステムが全然違うものに見えてしまう。そう言う経験があるという考え方がポケットである。

ポケットは、無意識的、匿名的、周縁的という点で、落書きに似ている。後になって、誰かに発見される。ポケットは、客観的なものではなく、構造の中に隠されていて、別の時間軸を持っている。見つけた人にしか分からず、それが意味を持つのは発見した当事者にだけである。特異な空間としてのポケットは、人に見つからない様な主観と客体のある特殊な繋がり方に特徴があり、わかる人にはわかる分からない人にはわからないという暗号性を持っている。通常の社会システムのかでは居場所がないという人が、ポケットを持つことによって自分の世界を獲得できる。個人の領域の微分化=今ここに私の空間があるということを発見できる様になる。個というものが生きて行くうえで、一般化できない、通訳できない、一緒の空間には住めないという意識がポケットを作らせる。

ポケットは国家から、自分を、プライベートを隠すあるいはカモフラージュするシェルターである。隠すという人が持つ権利をなんとか行使した形がポケットである。

2013年11月20日水曜日

Part6



前回(2013/10/24)の授業でのアドバイス

もっと複雑にした方が良い。

発見するかどうか分からないけど、僕がまず誰かが発見する可能性のあるポケットを色んな所に作る。これが資料A。気づくかどうか分からないけど、あるとする。いまテクストAが見つかった。このテクストを介してポケットAを見るとそのポケットAの意味がわかる。でも、もっとたくさんテクストがあった方がいい。そしたら、このポケットはトオル君以外の人の物にもなるかもしれない。数年後にポケットとテクストが見つかったとする。そうなると面白くなる。

展示するとしたら本になる。
ジャンルの違う文章も書く。全部、ポケットについて書かれている。






「ポケットと皺」その2

コトミは新宿駅から徒歩15分の大手建築事務所にCADオペレーターとして勤めていた。毎日、山程の図面作成や修正をこなし、上司からの細かいチェックにも対応し、最終電車で帰宅することがほとんどであった。事務所に寝泊まりすることもあった。入所してから5年が経ち、精神的な疲労が限界に達し、仕事のスピードも入所したての頃と比べるとだいぶ遅くなり、毎日のように上司から怒られるようになった。

そんな毎日の繰り返しで、半年程前から統合失調症の一症状である関係妄想を抱く様になった。人の瑣末な身振りや言動、そして身の回りの物の色が気になって仕方なかった。コトミは混乱していた。一見無関係なものを関係あるものとみなし、それらが自分を威嚇する様なメッセージを持っていると考える様になってしまった。例えば、誰かが咳払いをすれば、自分の仕事が遅いことを忠告されているに違いないと感じ、誰かがヒソヒソ話をしていれば、きっと自分の陰口が言われているに違いないと、思い込む様になってしまっていたのだ。終には、事務所内の皆がこぞって口裏を合わせて自分を欺こうとしている、といった妄想を抱くまでになった。しかし、そんな妄想が彼女にとっては「現実」だった。

些細なことが気になってしまうコトミには、最近どうしても気になって仕方ないことが、ひとつあった。それは毎朝の通勤時に通りがかる新宿の地下道にあるポスターボードのわずかな色の違いとほんのわずかな膨らみだった。ある日、帰宅時にどうしても気になったので、勇気を出してボード横の隙間から手を入れると、中から一冊のノートが出て来た。表紙には、「日記 葉山トオル 20124月〜11月」と書かれていた。人通りの多いこの地下道でそれを読むのはためらいを覚えたので、スッとバックの中に入れ持ち帰った。新高円寺のアパートに帰宅するとすぐにノートを取り出し読み始めた。日記のほとんどが職場の不満やグチだったが、目に止まったのが、2012610日(日)の日記だった。
 
2012610日(日)
 友人の誘いで、明清院という宗教セミナーに参加した。 
 2時間教えを聞き、1時間お祈りをした。
 退屈な日々の中で、何か救われる思いがした。 
 宗教というものには、疑問を持つが来週も参加してみようと思った。

2012617日(日)の日記にも目を通してみた。

 2012617日(日)
 明清院に行った。
 また、2時間教えを聞き、1時間お祈りをした。
 腹の底からスッキリした。
 世界観が広がる思いがした。
 けれど、集団で盲目的に何かを信じるといった宗教というものには、疑問が
 残る。
 
職場で集団的いじめを受けているという妄想を抱いていたコトミは、その発端は所長だと信じていた。所長は、自分を辞めさせるために、所員にコトミが困る様なことをするよう指示しているのだと思っていた。そんな、所員の皆が所長の命令を聞いて実行に移している状況に、宗教性の様なものを感じていた。なので、コトミはトオルの日記の「集団で盲目的に何かを信じるといった宗教というものには、疑問が残る」という一文に強く共感した。2012624日(日)のセミナーを最後に明清院に行くのを止めたと、日記には記してあった。トオルの日記を読んで、コトミは事務所を辞めることを決心した。次の日、コトミはお礼の手紙を添えて、トオルの日記帳を元のポスターボードの所に戻し、辞表を提出した。

近頃、体が怠く、頭の混乱も抑えることができなかったので、精神科に行って診てもらった。統合失調症と診断された。コトミは、トオルに習って、この統合失調症の体験と闘病生活を綴った日記を書いてどこかに隠そうと考えた。もしかしたら、自分の様に誰かが発見し、その人のためになるかもしれないと思った。4ヶ月後、日記をノート一冊分書き終えたので、「日記 児島コトミ 20132月〜6月」と表紙に書いて、新宿地下道のトオルのポケットに仕舞った。

2013年10月23日水曜日

Part5


「ポケットと皺」

トオルは運送会社で派遣として働いていた。新宿のとあるテナントビルで館内配送の業務に付いていた。トラックで運ばれて来た荷物を降ろし、台車に積み替え、各テナントに宛先を間違えることなく配達する。荷量も多くかなりスピードが要求される仕事だった。それだけに肉体的な疲労も強く、家に帰るとテレビを見ながら酒を飲んで寝るだけという毎日を送っていた。ただ、そんな毎日に決して満足はしていなかった。

ある日、仕事から帰宅し、いつもの様にテレビを見ていると、コンピューターネットワーク上の大規模なハッキングのニュースが流れて来た。なんらかの者により、国家機密や国を管理して行く上で重要なデータが攪乱された。銀行や証券会社もターゲットになり、個人データが消去され、経済にも混乱を与えた。データで荷物を管理する物流もストップしてしまった。

翌日、仕事場へ行くと物流が止まっていたので、荷物はわずかしか到着せず、午前中で仕事が終わり帰宅することになった。家に着いてもとりわけすることもなかったトオルは普段通り、横になりながらテレビをつけると、警察が今回の事件の犯人、つまりハッカーの追跡に動き出したと、昼のワイドショーで報道していた。同時に、国は早急にシステムの復旧を目指しているとのことだった。夜になると、上司から連絡が入り、システムが回復するまでしばらくの間仕事は休みになると伝えられた。

二日後、お昼にコンビニエンスストアに弁当を買いに外へ出ると、その途中背後に気配を感じた。明らかに誰かに付けられている。早歩きを始めるとその気配も早くなった。コンビニエンスストアで急いで買い物を済ませ、家に帰りドアを閉め、鍵をかけた。

次の日、朝十時丁度に、誰かがドアをノックする音が聞こえた。ドアの覗き穴を覗くと、四十代半ばくらいの黒いスーツを着た男が二人立っていた。
「何か御用ですか?」ドア越しに話しかけた。
「こちらは葉山トオルさんのご自宅で間違いないでしょうか?」という返事が返って来た。
「はい、そうです」とトオルは返答した。
「中野警察署の者ですが、お訪ねしたいことがありまして、お伺いしました。」
二人は刑事だった。おそらく、昨日の通りで感じた気配は彼らだったのだ。何も身に覚えのなかったトオルは、黙ってドアを開けた。
「三日前に起きた国家規模のハッキングの件なのですが、葉山さんに容疑がかけられていまして」と令状を見せられた。令状の内容は、パソコンのデータをチェックさせてほしい、というものだった。トオルは驚いたが、当然ハッキングの知識もなく、パソコンにはハッキング関係のデータもある訳はなかったので、素直に承諾した。二人は四時間かけてトオルのノートパソコンと外付けのハードディスクを調べあげた。当然、何も発見されず容疑も否認され、二人は帰って行った。トオルは何故ハッカーに疑われたのか不思議でならなかった。

この日を機会にトオルは変わった。いつ何が起きるか分からない、そして自宅に大切な物を置いておくと逆に危険な目に会うことを悟ったのだ。まず、大切な物を部屋の中から掻き集めた。日記、写真、手紙、預金通帳、本、思い出の品々。そして、街の隙間にそれらを隠すことを考えた。ただ隠すだけでは、人に発見されてしまう可能性や雨風にやられてしまう恐れもあるので、少し手を加える必要があった。それをトオルは「ポケット」と呼んだ。

街のあちこちに秘密の隠し場所を持った。例えば、地下鉄の駅のポスターを貼るボードには、駅員に気づかれぬ様にボードと同じアルミ素材でできた厚さ1mmの薄板を、ポスター1枚分のボード全体に張り付け、その薄板とボードの間に出来た隙間を自分専用の「ポケット」として利用していた。手紙など薄い物しかここには入れられないが、それらは、背景に溶け込んで気づかれることは難しい。

2013年10月12日土曜日

Part4


ポケットの使い方

○人には言えないことを入れておく。
何故?言論統制がしかれている時に、後世に事実を伝えるため(タイムカプセル的)

○お金を入れる
何故?銀行に信用がなく入れておくと危ないから。
誰にも気づかれずにある特定の人に渡すため(私書箱的、知っている人だけが使える)

○写真、絵を入れておく
何故?後世に事実を伝えるため(タイムカプセル的)

○機密文書
何故?持っていると危険な目に遭うかもしれないから

○手紙
誰にも気づかれずにある特定の人に渡すため(私書箱的、知っている人だけが使える)


これに基づいて、短編小説を書きます。

2013年9月30日月曜日

Part3


前回(2013/7/31)の授業でのアドバイス

○前回の作品について
-もうちょっと相手(背景)に溶け込もうする意志を入れる。

展開の仕方のアドバイス
-ポケットは内側と外側が入れ替わる。
-ポケットを後から取り付けたのだけれども、ポケットがそもそも始めから在るかの様に見えものを作る。
-ポケットを「付ける」のではなくて、ポケットに何かが「付いている」かの様に見えるものを作る。
-ポケットを隠せる場所を探す(隠蔽工作)。
-虫とか動物の立場で隙間を見つける(例えば、戸袋に動物が棲む)。
-間の空間(虫が巣を作りそうな所)。
-別空間をどこに隠せられるか。
-透明なポケットが良い。
-自転車のグリップにポケットを付けて、お札を隠させる場所を作れる。
-駅のポスターを貼る掲示板のスリットを利用してポスター大のポケットが作れる。
-境界線上の工夫。
-リュックサックに付いている収納式の雨よけカバー。普段は折り畳まれているが、使う時は開いて全体を覆う。

○「ポケット」というコンセプトの可能性について
-Aの空間とBの空間の間にポケットが別空間としてある。それ自体が物体としてあるわけではなく、隠されている、折り畳まれている別空間。
-境界線だから大きさを持たないはずだけれども、あるやり方によっては突然大きくなって裏表がひっくり返る、と言った様に、世界の淵だった所が世界を覆う。淵が大きさを持つ。
-そういう場所は故に、ある既存の空間に取って住みにくい。マイナーな存在にとってみるとそういう空間はニッチであり、有利な空間として活かされる。虫とかホームレスとか。
-ポケットを実態として考えない。
-既存空間Aに属さない、既存空間の境界線上の大きさを持たない領域が、ある仕掛けによって、既存空間Aそのものを覆うぐらいの大きさ持つ。属さないことで、ひっくり返る可能性がある。しかし、属さないと入り口がないから、一応、境界線(エッジ)が入り口になる。(位相逆転)
-近傍、トークン、タイプ
-境界線は集合には入っていない。
























Part2


前回(2013/6/12)の授業でのアドバイス

○前回の作品について
-背中のポケットが面白い。
-自分ですら手を入れられない。純粋ポケット(本当に困った時だけ使う)
-背中のポケットは誰の物?誰の物でもない。普通はそう言う所に観音様や札を入れておく。

○展開の仕方のアドバイス
-色々な所にポケットをつけてみる。ex)駅のポスターを貼る所に、ポケットになっているポスターを中身を入れずに貼る。言っちゃいけないことを書いて入れて下さい、などとして。Private Public Poster→パブリックには表明できないことを入れる。
-100人に自分のポケットをつけさせて、分散させて歩かせる→早崎ボックス→私書箱。
-人の家に忍び込んで、色んな所にポケットを作る。人の家に自分のテリトリーを作る。私書箱。
-椅子にポケットをつけるには、背もたれの布部を切って穴をあけるだけで良い。
-「ポケットの空間学」という本を書いてみては。襞

○「ポケット」というコンセプトの可能性について
-ポケットの可能性、単に造形的なものではなく、何故ポケットを作っているのかを言えた方が良い。
-ポケットは建築的に面白い。
-ポケットは、服の中にある別のプライベートな箱。
-自分の大事な物を色々な人の所に分散させると安全
-ポケットは別空間→寄生空間。ex)木のほこらにリスが住むみたいに。
ポケットの中でペットを飼う。寄生する→Occupy
-現代美術的に言ったら、皮膚の中にポケットを作れる→貸金庫として、人の皮膚を貸してもらう。スパイとかやっていそう。寄生動物の基本。
-ダニとかは、皮膚の凹凸のポケットに住んでいる→ニッチ、隙間。
-領域があった時に、内側と外側を分ける境界線にも幅があり、そこに空間があって無法地帯になっている。それがポケットの感じがした。


今回の作品の展開
他人の私物や公共物にポケットを取り付け、その場所を占拠しポケット空間を作り出す。





































Part1

表(多ポケット付きYシャツ)
裏(多ポケット付きYシャツ)